院長から

厄災のあとで

投稿日:2020年6月8日 更新日:

今年の「春」はどこにあったのか、と嘆く方も多いのですが、6月ももう10日になろうとしています。1月以上に及ぶ「外出自粛」の期間、多くの人が家の片づけや「断・捨・離」に励んだようです。

思いがけず「巣ごもり」を強いられた時間、片づけをした人は「もの」と向き合いながらどんなことを思ったのでしょう。捨てようとしたものをまた仕舞ったり、失くしたと思っていたものが出てきて、「なんだ、あなたはここにいたの?」と、ものと語ることもあったかもしれません。

3.11のあとで、わたしたちはそれまで積みあげてきたものが一瞬にして失われる体験をしました。あの時から年月が過ぎて、何を新たに所有し、何を捨てたのか、この9年をふり返る時間にもなりました。ものとの付き合い方は自分の性格や価値観と向き合う事でもあります。あのとき「大切なもの」を確認し、その後「ぜい肉」のない自分でいられたでしょうか。

「コロナ後」をわたしたちはどう生きるのか。大きな自然災害や厄災は辛いことですが、ときにはそれが人間を賢くすることを信じたいわたしです。