院長から

案外皆がご存知の「ライオンのおやつ」

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施設の会議室の一画に職員用の図書コーナーがあります。職員だけではなく、入所者様、そのご家族、デイサービス利用者等々、皆様に広く貸し出し、ご利用の案内をしています。小説やノンフィクションが中心の図書購入ですが、できるだけ多くの方に読んでもらえるように新刊本のニュースには特にアンテナを高くしています。

きょうも図書コーナーの前で、ひとり真剣に本を選ぶ高齢のご婦人が。元気応援型デイサービスをご利用の方でした。「いつもお借りしてます。良い本ばっかりで」という言葉と同時に返却されたのは、辻村深月の『朝が来る』、しかもすでに何冊も同じ著者の本を借りているご様子。失礼ながらお若いセンスに驚きました。さらに続けて曰く、「この前読んだ『ライオンのおやつ』、とっても良かった。前回の本屋大賞2位だったけど、1位の『流浪の月』より、私は『ライオン』の方が良いと思いました」と。思わず、今回の本屋大賞の候補作『雲を紡ぐ』を示すと、「ああ、それも読みました。盛岡の話ですね」と。ちなみに『ライオンのおやつ』はわたしも年長の女友だち中心に「宣伝」しましたし、前号の法人広報紙『ふくじゅ』の「紙魚のひとりごと」にも書かれたことで多くの方に読まれ、80代90代の女性から熱い共感を得ています。

多くの”先輩方”に励まされるのはこんな時でもあります。時にはわたしなどより確かな記憶力で、読んだ本のことを語って下さいます(当方、時折ミステリの結末を忘れます)。

施設内においでの皆さん、充分な感染予防をしながら図書室に足を向けてみませんか。活字の中は以前と変わらぬ世界が広がっています。

 

※先日の芥川賞、直木賞受賞作、村上春樹の6年ぶりの短編集が入荷しました。