院長から

アンコールはサム・テイラー

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サックス奏者はステージにあがると、一礼するなり演奏を始めました。「?」と観客が見守る中、流れ出たのは唱歌「ふるさと」のメロディーでした。曲に合わせてすぐに口ずさむ入所者さんもあり、その歌声は続いての「赤とんぼ」のときに更に大きくなりました。音楽には言葉がなくても人の心を掴み、ひとつにする力があります。一瞬にしてそのマジックを見せて下さったのは、地元在住のサックス奏者「Eryca」さんでした。

「あらかじめ定めたプログラムではなく、入所者さんと向き合って、その場の雰囲気で演奏曲を決めます」と事前打ち合わせのとき話していたとおり、入所者とのかけ合いを楽しみながらショーを進めて下さいました。最後の曲が終わり、皆さんからの「アンコール!」の掛け声に「どんな曲が良いですか?」と問うErycaさんに、場内からすかさず「サム・テイラー!」と声が上がったのにはわたしもいささか驚きました。Erycaさんもお話ししていたように、実は80代、90代の方の中には戦後のアメリカからやってきたジャズに夢中になった方も多いのです。数百曲のレパートリーがあるというErycaさんも、咄嗟に曲が出てこなかったことを残念がりながら、次回はサム・テイラーのナンバーを準備しての来荘を約束してくれました。

今回のアンコール曲は、中島みゆきの「糸」でした。「たての糸はわたし、横の糸はあなた――」。誰もが自分の大切な人を想いながら聴いたことでしょう。あっという間の楽しい時間は、この地方で言う「残りいい(名残りがある)」ところで散会となりました。