院長から

閉塞感の中の「鬼滅」の大活躍

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今や「それって何?」「その人誰?」ときかれることなど考えられない漫画、そしてアニメーション「鬼滅の刃」と、その主人公「竃門 炭治郎」。映画の劇場公開初日から3日間で興行収入は46億円を超え、わずか10日間で100億円を突破し、多くの興行記録や物販売り上げの記録を更新し続けています。コロナ禍の映画館での上映も、席の設け方やチケット購入の時間短縮のためのはからいなど、随所に配慮がなされています。

それにしてもこの人気ぶり、子どもは無論、大人も映画館を出て「号泣しました」と話すなど、日本じゅう老若男女を問わない浸透ぶりを少々不思議に思うのは私だけでしょうか。登場人物一人ひとりに陰影があり、読者はその中の誰かに自分を重ねるのでしょうか。大正時代の設定であるこのストーリーは、単なる「勧善懲悪」ではなく、現代社会にも通じる複雑さを描くことで、多くのファンを獲得しているのでしょう。

「鬼滅効果」は物販にも多大な影響力で、コラボレーションしたものすべてがよく売れているようです。文具、スマホ関連グッズ、食品、外食産業等々……。鬼滅グッズの販売成功で、会社の業績が上向いたところもあるやに聞きます。コロナ禍で物流や消費が滞っている時期に、まさに神風的効果を発揮したわけです。思わぬ副産物(?)効果は、コミック単行本にルビ(ふりがな)がふってあるため、かなり難しい漢字を読める子どもが増えたこと、「鬼滅」目的に本屋に行く親子連れが増えて、他の本の売り上げも増えていること等があります。

30代女性の作者は、最初からこの連載が終わったら引退を決めていたそうですが、その理由が「家族を介護するため」というのはいかにも現在の社会情勢を表わしています。また、このヒットで文字通り億万長者になったら、突然周囲に親戚を名乗る人が増えたとごちているのも、まったく今的ではあります。

このあと、人々が年月を経て自分の体験を振り返るとき、古くは「昭和20年=終戦の日」の出来事や「2011年=3.11 東日本大震災」がそうだったように、「2020年=コロナ禍、鬼滅の刃」は、自分が何歳のときの出来事だったのかを誰でもが瞬時に思い出す大きな出来事の一つになるでしょう。