院長から

また会う日まで?

投稿日:2020年11月25日 更新日:

来年で創刊60周年を迎える月刊誌「ミセス」が、あと4回の発刊を残して来春で休刊する――。一瞬耳を疑い、次の瞬間はなんとも言えない気持ちになりました。

近年、多くの人々が情報を得る手段は、活字を印刷した紙からモバイル機器に移行しています。そのようなもともとの下地があったところに、このコロナ禍です。家で過ごす時間が長くなり、書籍ぜんたいの売り上げはわずかに伸びているとも聞きますが、ファッションやインテリアの撮影に要する人手が不足し、掲載すべき洋服じたいの製造も減っているとのことで、月刊ファッション誌の中には従来なら月1回の発行を2ヵ月分の合併号にするものも出てきました。

わたしはかなりの雑誌好きであることを自認しています。雑誌の魅力は沢山ありますが、そのひとつは「予想外のものを見せてくれる」ことにあるでしょう。自分の知りたい「こと」や「もの」についてのキーワードを入力、検索して情報に辿りつく方法では、当然ですが絞り込まれた情報が提示されます。ところが、雑誌はページを開けば全て雑誌の側から、こちらの興味とはかけ離れた事柄までも「さあどうぞ」とばかりに多くのことを教えてくれます。雑多な情報が詰め込まれた「雑誌」とは、全く言い得て妙なネーミングです。

着物を見ようと本を広げると、それ以外に花生けだったり掛け軸だったり、時には音楽だったり、思いもかけないものが目に飛び込んできて興味がそちらに移り、また新しいことを知る――。雑誌を開くたびに、何度もそんなことを経験してきました。

週刊誌は週に1度、月刊誌は月に1度、日にちを約束して会う友人に似ています。約50年の長きにわたり「つきあって来た」友は、突然の予告ののちに私の前から姿を消すことになりました。貴婦人(ミセス)の後を追うかのように、別の「友人」が次々欠けることのないよう祈りつつ、あと4回の逢瀬(発刊)で名残りを惜しむことに致します。