院長から

ウイルスと共に生きる?

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5日24日付の朝日新聞「天声人語」によると、

地球は46億年前に誕生した。ウイルスが生まれたのは30億年前。人類にはまだ20万年の歴史しかない。もし地球全史を1年に圧縮すれば、ウイルスは5月生まれ。人類は大みそかの午後11時37分に生まれたばかりとなる――のだそうです。

あけて本日25日の一面は、ウイルスを使ってがん細胞を破壊する治療薬が承認される見通しの記事が載っています。対象となる病気は脳腫瘍の一種、「悪性神経膠腫」であり、云々――と書かれており、まだ臨床試験の件数は少ないものの、生存率を大幅に高める効果があったとされています。

ウイルスは人類の大先輩であり、そしてコロナウイルスやペスト菌のように、人類に害をなす「悪玉」ウイルスもあれば、病気を治すために使われる「良い」ウイルスもあります。ですが彼らウイルスからしてみれば、人間の都合や価値観で勝手に「こちらは善玉」「あっちは悪玉」と分類する人類こそ、傲慢そのものに映るかもしれません。

昨年から続くコロナウイルスと人類との攻防を、戦争に例える向きが少なくないことに、ある作家が警鐘を唱えていました。彼曰く、『コロナとの戦いは、善と悪、敵と味方の対立ではなく、どれだけ知恵を絞り、助け合えるかという試練の場。殺し合う力の戦いではなく、生かし合う知恵の戦い。敵意や憎しみは不要なものだ』。個人的には納得させられるものがありました。我々人類の手は、ウイルスへの刃を振りかざすためのものではなく、隣人と固く手をつなぐためにある――そのことを忘れて、安易に「戦い」などという言葉をつかうまいと自分に戒めたことでした。