6月9日掲載の別記事にあるように、今、2階の廊下は季節の花がさかりです。あらためて、自分が暮らす周辺を見まわすと、本当に多くの草木に囲まれているのがわかります。「東北の春は白い花に始まる」とおっしゃっていた年配の知人がありました。シロモクレン、ヤマザクラ、ヤマボウシ、シロヤマブキ。白い花を頭の中で数えあげていましたが、この頃目にとまるのは紫の花です。シラン、ホタルブクロ、ミヤコワスレ、アツモリソウ、クレマチス……。そして、わたしにとって紫の花といえば「桐の花」です。この木は、10~15mほどの木の上部に紫色の花が小枝の先に下向きに咲き、遠くからでも特徴ある桐の木であることがわかります。
子どもの頃、近所に桐の木があり、花の咲く頃その下を通ると、甘酸っぱい独特の香りがしたものです。匂いにひかれ、散っている花を手に取ると、花弁は短毛が密生し、手がねばねばになります。今は、通勤の折に遠目にこの木を見るようになりました。郷愁にかられて、どうしてもじかに触れたいときには、桐の木のある所に車を止め、花の香を吸い込むことさえあります。
ふだん目にする庭の草木とちがい、その季節、その場所に行かなければ見ない花ですが、わたしの頭の中には近隣の「桐の木マップ」があります。一方、桐の花を知らない、という人も多いのですが、岩手の県花は「桐」です。かくいうわたしも、いつ、なぜ桐が県の花になったのかは知らず、これを書くにあたって改めて調べる運びとなった今日でした。