(お詫び)
先般の福寿荘短期入所生活事業所(ショートステイ)ご利用者様の死亡事故につきまして、ご遺族様、関係各位の皆様に多大なるご心痛とご迷惑をおかけしたことを心からお詫び申しあげます。
今、私どもは施設をあげて、あらゆる事故の再発防止に取り組んでおります。皆様には今後とも、ご指導のほど宜しくお願い申しあげます。
今年も、あと30日余を残すのみとなりました。この季節になると、年を重ねて「高齢者」といわれる年代になった身には、本当に1日1日が飛ぶように過ぎていきます。朝晩の寒さがいっそう厳しくなってきましたが、皆様もおかわりなくお過ごしでしょうか。
さて、10月初旬にノーベル物理学賞を受賞した気象学者の眞鍋淑郎さんが、自宅でインタビューを受ける様子がテレビで流れていた時のことです。ご本人の後ろに写る墨書の額が、どうにも気になって仕方ありません。ついつい眞鍋先生のお顔よりも、「あれって誰の額?」と、背面ばかりをずっと見ていました。後日、わたし以外にも多くの人があの額のことを心に留めていたことがわかりました。放送後、あまり日をおかずに、朝日新聞「天声人語」内でくだんの額のことが取りあげられ、ひとつが井上靖、もうひとつが白鳥省吾(しろとりせいご)の作品だとありました。
白鳥省吾の名の、思いがけない登場に驚きました。しばらく前のことですが、白鳥(ハクチョウ)が飛来することで有名な伊豆沼を訪れました。その道すがら、「白鳥省吾記念館」が近くにあることを示す案内板が目に入り、彼が宮城県栗原郡出身の詩人だと知りました。「次に伊豆沼に来たら立ち寄ろう」とその時は思ったものの、今回、新聞で彼の名前を再び目にするまで、わたしの頭の中からこの詩人の存在はすっかり消え去っていました。
「天声人語」によると、「眞鍋先生のおうちの額」をきっかけに白鳥省吾は一躍脚光を浴び、彼の記念館には、コロナ禍にもかかわらず県内外から多数の来館者があるのだそうです。「民衆派詩人」といわれた彼の詩の何が、眞鍋先生を惹きつけたのでしょう。ご自宅に掛けられた書は、「夕景」という、厳しい冬の東北の農村風景を描いた詩の抜粋です。〈夕暮〉〈雪の白〉〈寒き地〉〈氷〉〈枯草〉〈雪の上〉…。暗くなる直前の雪原の情景を語る言葉が、気象学者の琴線に触れたのでしょうか。
『偉大な科学者は、胸底に詩を持っている』というのは、本当に本当なのだな、と思ったことでした。