院長から

冬の光に思う

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昨日、仕事を終えての帰宅途中、水沢大鐘にある南地区センターの前庭で、クリスマスイルミネーションの点灯が始まっているのに気がつきました。鮮やかなブルーの電飾が、間歇的に庭の木々を浮かび上がらせます。これは、東日本大震災からの復興祈念を契機に始まり、今年で8年目とのことです。毎年この時期になると、「本格的に寒くなる頃に始まるなぁ」と感じながら横目で見て通り過ぎていました。

雫石町の「小岩井農場まきば」でも、12月1日からイルミネーションイベントが始まるそうです。29日の内覧会の説明では、例年より範囲を広げ、約90万個のLED照明でまきば園全体を装飾する――とあります。具体的なイメージがしづらいのですが、水沢の南地区センターのLEDが約3万個ということから、なんとなくですがその規模の大きさが伺えます。

日本の大がかりなイルミネーションイベントが特に注目されるようになったのは、阪神・淡路大震災の後からのように記憶しています。1995年の12月、震災発生から1年が過ぎようとしている年末に神戸の街を彩った「灯り」に、わたしたちは目を見張りました。その後も、神戸のイルミネーションは毎年デザインを変えて作成されています。やがて、東京は丸の内のオフィス街でも、年の暮れから新年までをイルミネーションが彩るようになりました。仙台市の定禅寺通りの「SENDAI  光のページェント」なども有名です。明かりの中を歩く人々の姿がニュース映像に映し出されるとき、まるでそこにいるのは笑顔の人だけかと思えるほど、みな幸せそうな表情をしています。

東日本大震災のとき、文字通り「灯り一つない」、ほんものの暗闇を経験した方もおいででしょう。街がすっぽりと闇に包まれたあの頃の幾夜かは、星がこうこうと光を放っていた記憶が鮮明です。そしてあの時、「灯り」「光」がどれだけ大切なものかを、わたしたちは痛感しました。灯りは「暖かさ」を連想するものでもあります。かつてのいくつかの大震災のあとは特にも、「明るいもの、暖かいもの、美しいもの」を求める気持ちが高まり、それが各地のイルミネーション開催につながったのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この頃は、何かの記念や祈念のために、夏以外の季節に花火を打ち上げることも珍しくなくなりました。冬の花火も、やはり「光」に魅せられた人々が始めたことでしょう。夜、野原に小さな火をたき、その周りに集った有史以前の人類から、真夜中でも明るいコンビニエンスストアが身のまわりにある今の我々まで、ヒトが「灯り」を強く求める気持ちは何千年も何ら変わっていないのかもしれない――そんな思いをふと抱きます。

わたしたちのこの冬の、そして来年の暮らしに、もっと光がありますように。