水沢にも桜だよりがきかれるようになりました。市内の小中学校や高校では、コロナ禍のために入学式を延期した学校もあるそうですが、どこの学校でも「新学期」は始まっています。
わたくしは令和4年3月31日をもちまして院長を退任し、令和4年4月1日付で常務理事という新しい役職に就任し、これまでとほぼ同様の勤務時間で仕事をしています。あわせてブログカテゴリは、これまでの「院長から」に代えて「常務だより」になりますが、どうぞ引き続きご愛読くださいませ。
施設では、昨年度末から今年度始めにかけて、新型コロナウイルスに感染した入所者様が1名、職員にも1名ありましたが、幸い二人とも快方に向かっており、それ以上の感染の広がりはありませんでした。
感染症に気を取られ、つい視線も内向きのまま暮らし、ふと外界を見ると、外は花の季節になっていました。施設の中庭のふきのとうは、まさに既に「とう」が立ち、馬酔木、こぶし、白モクレン……。そしてまだまだ若い、心細げな幹の桜にも、花がついています。東北の春は白い花で始まるーーという言葉を思い出します。
今、コロナウイルス以上に世界に暗い影を落としているのが、ロシア軍によるウクライナ侵攻です。大勢の人々の希望的推測を裏切って、戦闘状態は既に一ヶ月以上続き、世界の国々を巻き込んでいます。爆撃された都市の街並みや、道端に放置されたままの遺体、避難する人々の群れ……。この頃は、テレビニュースを観るのが辛い人も多いことでしょう。もとは建物があったはずの都市がぺしゃんこになり、どこまでも続くがれきの光景……。もとの姿を取り戻す日など来るのだろうか、と、暗澹とした気持ちになります。
太平洋戦争の末期、原子爆弾によって広島がのっぺらぼうの土地になったとき、「(放射能汚染の影響で)広島にはこのさき数十年、草一本も生えないだろう」と言われたそうですが、実際には雑草がまもなく芽を出したことは広く知られています。だれが教えなくとも、「その時」が来たら草は伸び、沈黙のうちに花は咲くのだと、季節のいとなみの強さに圧倒される思いがします。ウクライナのがれきの下にも、きっとさまざまな種子や根がひそんでいることでしょう。
高齢者の方々と、主に施設でおつきあいを重ね、いつも心の中で、あるいは敬老会の折などには言葉に出して感謝することがあります。それは、太平洋戦争が終結した後、皆さんが「日本はもう戦争をしない」と決めて下さったことです。8月15日や敬老会の折、あるいは100歳のお祝いのときなどに、たくさんの方々が「戦争はしてはわがね(してはいけない)」と話されるのを、何度も耳にしております。世界では実は毎日のように、小さい戦争(内戦)はあるのだといわれています。平和なこの国に生まれた偶然と幸運に、感謝せずにはいられません。
世界中の国や人々が、戦闘状態の解決のために、それぞれの立場から自分に出来ることを探したり、あるいはもう実行に移したりしています。あらゆる可能性を探り、力を尽くした後は、人はただ祈るしかないと思うのはわたしだけでしょうか。