いつもながら、季節の移り変わりの早さには驚くばかりです。特にもこの夏は、7月の安倍晋三元首相への狙撃事件や、英国女王の死去と国葬など、国内外で大きな事件があり、新聞もその関連記事にかなりの紙面を割く日が続いていました。
そんな日々の中で、朝日新聞朝刊に毎週日曜日に掲載される「朝日歌壇」は、決まったページに決まったスペースでいつも変わらずそこにあり、わたしを始め、多くの読者をほっとさせていることでしょう。歌は何気ない日常を歌ったものから、世相、時局を反映したものまで様々ですが、これは全国から毎週投稿される2500首の中から4人の選者が10首ずつ選び、40首が掲載されます。
「若菜集」に初めて会いし青春の 杜の都の高山書店
10月2日の「朝日歌壇」の一首です。仙台にあったこの書店の名を目にするのは、実に久しぶりです。『杜の都』とあるので仙台が舞台とわかるものの、どれほどの読者がこの『高山書店』に反応するでしょう。学生時代、仙台へ行ったら一番丁へ足を運び、そこにある高山書店をのぞくのは、いわばわたしの「定期コース」でした。20年前、この書店の閉店は地方ではちょっとしたニュースになり、岩手でそれを聞いたわたしも「え、高山書店がなくなるの?!」とショックを受けたものでした。
しかし高山書店の閉店は、全国的に相次ぐ「地元の老舗書店閉店」の、あくまで始まりでした。高山書店が消えたあと、来春(2023年3月)の閉店を決めた東京八重洲ブックセンターまで、自分がこれまでに行った本屋がどれほど消えていったのか、頭の中で数えてみました。大きな書店だけでも、八重洲ブックセンター、銀座旭屋書店、青山ブックセンター、銀座イエナ書店、渋谷書店、仙台のアイエ書店−−。他にも、コロナ禍以前の仙台の街を歩けば、「あれ? 前はここは本屋だったのに」と思って立ち止まることが度々ありました。
一番丁の商店街に取り付けられたスピーカーから流れるコマーシャルの「タカヤマ タカヤマ♪ タカヤマ書店♪」のメロディーを思い出すとともに、濃い茶色地に白抜きの筆記体で「Takayama」と書かれた1枚の栞がまだ手元にあることを、嬉しく思ったのでした。本日(10月5日)付の岩手日報には、「消えていく街の書店 この10年で全国で3割減少」という内容の記事が載っています。