今年は卯年(うさぎどし)、干支の中でも特に愛らしい動物とされ、物語の主人公になったり、キャラクター商品が作られることが最も多い干支といえるかもしれません。
さて、世界で最も有名なうさぎキャラクターはいったい誰でしょう。まず思い浮かぶのは、イギリス生まれのピーター・ラビットでしょうか。これはイギリスの湖水地方に住む、ベアトリクス・ポターという女性が生みの親(『ピーター・ラビットのおはなし』)です。1893生まれのピーターですが、その顔は最初は白黒の絵だったものが、そのうち彩色され変化し、今のものに落ち着いたようです。このいたずらうさぎは、4人きょうだいで農家のレタス畑にしのびこんでレタスを食べ、農夫のおじさんに追いかけられたり、病気になっておかあさんにヒマシ油を飲まされたりします。物語が進むにつれて登場人物が増え、うさぎ以外の動物も続々登場します。
イギリスのピーター・ラビットが写実風に描かれているのとは正反対に、ディック・ブルーナ作の、1960年代オランダ生まれのミッフィーは、ひと筆書きのような1本の太い線で輪郭が描かれ、目は黒い点、鼻はなく、口も点か”ばってん”の形で結ばれるかしています。ミッフィーの絵本では、主人公は「うさこちゃん」という名で登場しています。それがキャラクター商品が広く流通するにつれて「ミッフィー」の名で知られるようになりました。ですが、今でも絵本は「うさこちゃん」のままです。
うさぎ年生まれだから、というわけではありませんが、わたしはこの2匹のうさぎが大好きです。こちらも、絵本の巻が進むにつれて「仲間」が増えてゆきます。うさこちゃん以外の動物が主人公のものもあります。うさこちゃんシリーズの「せいかつ絵本」の中に、「わたしほんがよめるの」という1冊(訳:松岡享子)があります。はるか昔、自分の子どもへ読み聞かせるとき、「わたしほんがよめるの」というう主人公のことばは、そのまま自分の喜びと重なって、胸がいっぱいになったことが忘れられません。
「ピーターラビット」も「うさこちゃん」もどちらも、訳者は石井桃子です。ちなみにわたしは卯年生まれですが、このたびディック・ブルーナさんも卯年生まれと知りました。とっさに頭に浮かんだ2匹の「うさぎ」、あなたのお好きなうさぎは誰ですか?