3月26日から、東京の世田谷美術館で「出版120周年 ピーターラビット展」が開かれると知りました。作者のビアトリクス・ポターが自分の家庭教師だった人の息子の病気を慰めるために、自分の農場で飼っているうさぎをモデルに、子うさぎの物語を手紙に書いて送ったのが、このお話のはじまりだそうです。
登場する四匹のうさぎの名前は、フロプシー、モプシー、カトンテール、そしてピーターです。本の表紙になっているのが水色の上着を着たピーター(ラビット)であり、彼はぬいぐるみやカードになって世界中にあふれ、生誕120周年を経て、おそらく「世界一有名なうさぎ」と言っても過言ではないでしょう(もしかして、ディック・ブルーナさんが生んだ『ミッフィー(うさこちゃん)』の方が有名よ、という声もあるかもしれませんが)。
かつて、思いがけないところでピーターとその兄弟四匹全員の名前が呼ばれるのを聞きました。1999年のイギリス映画「ノッティングヒルの恋人」の中で、主人公のヒュー・グラントが、知り合ったばかりのジュリア・ロバーツといっしょに垣根を越えるシーンです。障害物に行く手を阻まれたとき、ジュリア・ロバーツが呟いたのが「フロプシー、モプシー、カトンテール、アンド…ピーター!」です。わたしは一瞬「?」と思ったのですが、そうか、これはイギリスではうさぎが垣根を越えるシーンにからめて、このような場合のおまじないになっているのだと気がつきました(日本での厄除けのことば、「鶴亀、鶴亀」などと同じでしょうか)。ピーターラビットファンのわたしが、その後何かに「ぶつかった」とき、心の中で彼らの名前を呟くことがあるのは言うまでもありません。
ビアトリクス・ポターさんはまた、絵本のキャラクターを商品化するための特許を取得した世界初の人と言われています。商才に長け、ピーターが生み出す収益をナショナル・トラスト運動(豊かな自然環境や文化財を、一般市民が買い取って保護・管理する運動)ににつなげた行動力は、1900年代前半の女性として時代の最先端を行っていたのでしょう。
上京がかなわない今、せめて久しぶりに「ピーターラビットのおはなし」を、通して読んでみましょうか。